小規模企業の44.1%で賃金総額増加も進む賃金格差の拡大
小規模企業の雇用や賃金に関する調査は少なく、その実態が見えにくいところがありますが、今回、日本政策金融公庫では、同取引先である原則従業員数20名未満企業を対象とした調査結果を公開しました(回答数:5,462企業)。
これによれば、従業員の過不足については37.1%の企業が「不足」と回答していますが、賃金の増減については以下のような状況となっています。
・2024年実績での賃金総額の増減については、「増加」44.1%、「ほとんど変わらない」49.5%、「減少」6.4%となっている。
・2024年実績を従業員規模別で見ると、「増加」と回答した割合は「1~4人」31.8%、「5~9人」57.1%、「10人以上」68.3%
・給与水準が上昇した背景については、「人材の定着・確保」が55.5%、「最低賃金の改定」が51.1%、「物価の上昇」が40.2%となっており、従業員数と大きな相関が見られる。
・給与水準が変わらなかった・低下した理由としては、「利益が確保できない」が68.3%、「借入金の返済を優先」が33.0%となっており、中でも1~4名企業ではその割合が大きくなっている。
・2025年の賃金総額の増減の見通しについては「増加」39.4%、「ほとんど変わらない」55.3%、「減少」5.3%となっており、増加の割合が減少している。
連合では来年の春闘の方針として、5%(中小企業では6%)の賃上げを目指しており、大手では前年同様の賃上げが行われる見込みが強くなっていますが、小規模企業ではその原資の捻出が出来ず、賃金の二極化は更に進行することになるでしょう。賃金格差は採用力の格差に直結しますので、小規模企業を中心に人手不足で事業継続が困難になる事例の増加が懸念されます。